去年、Schiit AudioのDAC、Modi Multibit(通称”Mimby”)を買った。
Head-fiやSBAFでは昨年7月の発売直後から「これはDAC界の価格破壊王やで~~!」と言わんばかりに大変盛り上がっていた品物(直売価格249ドル)。ここまで盛り上がったのはODAC以来じゃないだろうか。今なお称賛の勢いは衰えておらず、500ドル以下のDACではほとんどこれの話しか出てこないような状況……に見える。まあ、Schiit Audioはアメリカのメーカーなので、ちょっと地元贔屓は入ってるんじゃないかとは思いつつ。
で、日本語のレビューがほとんど無いようなので、ちょっと書いてみます。
Modi Multibitは、その名の通りマルチビットなDACです。Schiitいわく、『マルチビットDACは、世の大多数のDACとは異なり、真の16-20bitのD/A変換器を用いることで、すべてのデジタルオーディオサンプルのレベルを正確に再現できます。ほとんどのDACは、ビット深度がわずか1-5bitの安価なデルタシグマ方式で、すべてのデジタルオーディオサンプルのレベルを、前後のサンプルの値に基づいて概算しているにすぎないのです』とのこと。……デルタシグマ側にも言い分はあるだろうけど、Schiit的にはそういうことらしいです。
Modi MultibitにはAD5547CRUZという他ではあまり耳にしないチップが使われてるんだけど、これは本来、オーディオ機器ではなく、検査・計測機器など向けに作られたものなんだとかいう話。Schiitの他のマルチビットDAC(Bifrost、Gungnir、Yggdrasil)で使われてるチップも、医療機器向けだったりとか。そのあたり、オリジナリティがあって楽しい感じです。
少しウォームアップが必要とのことなので、念のため一日電源を入れっぱなしにしてから聴く(温度によってチップの特性が変わってくるからとかいう話を見たけどほんとかな?たしかに本体は結構熱くなる)。比較対象はODAC。
聴き比べてみると、際立つのはMimbyのキレの良さ。低域はギュッと締まっていてパンチがあり、高域はシャープにビシッと響く。これがマルチビットの味ってやつなんでしょうか(他のを使ったことがないからわからないけど)。これまで不満を覚えることもなく使っていたODACが、ずいぶんぼわ~んとした音に聴こえてしまう。
特に低域の見通しの良さと、その助けもあってのパーカッションの明瞭さが印象的で、打ち込みの曲は大変気持ちよく聞ける。ODACではブーミーな低域にいろんな音が埋もれていたのだなと実感できる。
ただ、Mimbyがあらゆる面でODACを上回っているかというと、そういうわけでもない。Mimbyの音場はODACより明らかに狭い。これは率直に言って残念ではあるけれど、ただ、以前NFB-11でも似たようなことを感じたので(キレはいいけど音場が狭い)、この二つを両立させるのはなかなか大変なことなのかもしれない。Schiitの上位機種ではその辺が改善されてくるのだろうか?
とはいえ、さすがにここまで音のキレに差があると、ODACとMimbyならMimbyを選ばざるをえない(まあ値段も大きさも違うけど)。デジタル入力もUSB・同軸・光と揃っているので、便利です。そこそこの価格でしっかり満足感が得られるModi Multibit、なかなかオススメです。
とかいいつつ、Audio-gdがこないだ出したSingularity 19が気になってたりして。まだレビューが上がってないけど。